ゲームや動画を子どもに渡す前に、家庭で決めておきたいこと
ゲームや動画をいつ子どもに渡すか。その判断は、後の学習習慣を大きく左右します。高松市の学習塾クローネ学園が、受動的な娯楽と子どもの集中力の関係を、経済学の視点も交えて、これから渡すか迷うご家庭に向けて解説します。
「周りの子はもうゲームを持っている。うちも、そろそろ渡した方がいいのだろうか」
「動画を見せると静かにしてくれる。でも、これでいいのかと、ふと不安になる」
小さなお子さんを育てるご家庭から、こうした声をよく聞きます。
ゲームや動画は、今や子育ての身近な一部です。悪者にするつもりはありません。ただ、たくさんの親子を見てきて感じるのは、これらをいつ、どう渡すかという判断が、後の学習習慣を思いのほか大きく左右する、ということです。この記事は、まさに今、渡すかどうかを迷っているご家庭に向けたものです。
受動的な娯楽に、子どもの意志で勝つのは難しい
まず、知っておいていただきたいことがあります。ゲームや動画、漫画といった娯楽は、考えなくても強い楽しさが得られるように、とてもよくできているということです。
これらは、指一本で次々と刺激が返ってきます。頭を使わなくても、受け身のままで、楽しさが向こうからやってくる。一方、勉強は、あえて頭を使う、しんどい活動です。この二つを並べたとき、子どもがどちらを選ぶかは、火を見るより明らかです。
これは、子どもの意志が弱いからではありません。人は、目の前の強い楽しさを優先し、遠い先の利益を軽く見てしまう性質を持っています。経済学では、これを現在バイアスと呼びます。大人でも、片手にスマホ、片手に問題集があれば、つい手が伸びるのはスマホの方でしょう。ましてや、自分を律する力がまだ育っていない子どもに、「意志で我慢しなさい」と求めるのは、酷というものです。
つまり、受動的な娯楽と勉強を、子どもの意志だけで両立させようとするのは、はじめから分の悪い勝負なのです。
一度渡したものは、後から取り上げるのが難しい
もう一つ、大切な事実があります。ゲームや動画は、一度渡してしまうと、後からルールを変えたり、取り上げたりするのが、非常に難しいということです。
最初は「一日30分だけ」と約束していても、なし崩しに時間が延びていく。取り上げようとすると、強く抵抗される。多くのご家庭が、この難しさを経験されています。これも、子どもがわがままだからではありません。強い楽しさを一度知ってしまうと、それを手放すのは、大人でも難しいことだからです。
だからこそ、ものを言うのは、渡す前の判断です。渡してしまってから対策を考えるのと、渡す前にルールを決めておくのとでは、難しさがまるで違います。
だから、渡すなら「渡す前」に家庭で決めておく
ここまでを踏まえると、向かうべき方向が見えてきます。ゲームや動画を渡すこと自体を、悪だと決めつける必要はありません。大切なのは、渡すと決めたなら、渡す前に、家庭のルールを先に決めておくことです。
経済学に、コミットメントという考え方があります。自分の意志の弱さをあらかじめ見越して、後で崩れないように、先に仕組みを作っておくという発想です。ゲームや動画との付き合い方も、まさにこれが効きます。
| 渡してから考える | 渡す前に決めておく |
|---|---|
| 使い始めてからルールを作ろうとする | 使う時間・場面を、渡す前に家庭で決める |
| 「そろそろやめなさい」と毎回声をかける | 終わりの時間を、あらかじめ約束しておく |
| 気づいたら生活の中心になっている | 生活の中の「一部」の位置に、先に置いておく |
一度使い始めてからでは、これらのルールは作りにくくなります。けれども、渡す前なら、ご家庭が落ち着いて設計できます。この順番が、後の何年もの負担を左右します。
まだ渡していない家庭は、恵まれた立場にいる
ここで、少し肩の力が抜ける話をします。もし、まだお子さんにゲームや動画を渡していないなら、あなたのご家庭は、とても恵まれた立場にいます。
なぜなら、これからどう付き合うかを、まっさらな状態から選べるからです。すでに渡している家庭が、あとからルールを作る苦労を思えば、これは大きな余裕です。焦って渡す必要は、どこにもありません。
それに、渡さない時間には、それ自体の価値があります。退屈な時間は、子どもが自分で遊びや興味を見つける、大切な時間です。手持ち無沙汰だからこそ、子どもは身の回りのものに目を向け、工夫し、考えはじめます。退屈は、しばしば好奇心の入り口になります。刺激で埋め尽くされていない時間があることは、決して悪いことではないのです。
渡すか、渡さないか。渡すなら、いつ、どう渡すか。この判断を、ご家庭の方針としてゆっくり考えられること。それ自体が、これからの子育てにおける、大きな財産です。
クローネ学園が大切にしていること
クローネ学園では、子どもが「自分で考えるのは面白い」と感じられる学びを大切にしています。受け身で与えられる楽しさではなく、自分の頭を使ってたどり着く喜びこそが、長く続く学びの力になるからです。
これは、ご家庭でのゲームや動画との付き合い方とも、地続きの話です。強い刺激に頼らなくても、考えること自体が面白い。その感覚を、できるだけ早い時期に育てておくこと。それが、後の学習習慣を支える、いちばんの土台になります。
まとめ
- ゲームや動画は、考えなくても強い楽しさが得られるよう作られており、子どもの意志だけで勉強と両立させるのは難しい(現在バイアス)
- 一度渡すと、後からルールを変えたり取り上げたりするのは非常に難しい
- だから、渡すなら「渡す前」に、使う時間や場面を家庭で決めておく(コミットメント)
- まだ渡していない家庭は、付き合い方をまっさらから選べる恵まれた立場にいる
- 退屈な時間は、子どもが自分で興味を見つける大切な時間になる
クローネ学園では、子どもが自分の頭で考える面白さを大切にしています。
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本記事の文章・図版の著作権はクローネ学園に帰属します。無断転載・複製・二次利用を禁じます。(執筆:横田 耕祐)
FAQ
よくある質問
ゲームや動画は、何歳から渡してよいですか?
何歳という決まった正解はありませんが、渡す前に家庭のルールを決めておくことを強くおすすめします。大切なのは年齢そのものより、渡し方です。時間や場面をあらかじめ決めずに渡すと、後からルールを作るのは非常に難しくなります。渡すと決めたら、渡す前に、いつ・どれだけ使うかを家庭で先に決めておくことが何より大切です。
動画やゲームを見せると、勉強しなくなると聞きました。本当ですか?
受動的な娯楽は、考えなくても強い楽しさが得られるように作られています。そのため、あえて頭を使う勉強のような活動に、子どもが自分から向かいにくくなる面はあります。完全に遠ざける必要はありませんが、渡す時間や場面を家庭でコントロールできる状態を保つことが、学習習慣を守るうえで役立ちます。
まだ渡していません。焦って与えなくてもよいですか?
焦る必要はまったくありません。むしろ、まだ渡していないご家庭は、これからどう付き合うかを落ち着いて設計できる、恵まれた立場にあります。退屈な時間は、子どもが自分で遊びや興味を見つける大切な時間でもあります。渡すかどうか、渡すならどう渡すかを、ご家庭の方針としてゆっくり考えてみてください。
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