この記事について
数Ⅲで「f(x)=n→∞limx2n+1x2n+1+⋯ で定義される関数を求めよ」「f(x)=[x]x は x=1 で連続か」といった問題に出会うと,多くの人が身構えます。極限・ガウス記号・連続性が一度に出てきて,どこから手をつけていいか分からなくなるからです。
けれども,これらの問題で本当にやることは一つしかありません。
- xn の極限なら:x が 1 より大きいか・小さいか・ちょうど境目かで場合分けする
- 連続性なら:場合分けのつなぎ目で,左極限・右極限・その点の値の 3 つを照らし合わせる
この記事では,その土台を一つずつ確認します。各テーマのあとに確認演習をつけました。
この記事でいちばん伝えたいこと
複雑に見える関数も,「区間を分けて,境目を調べる」という一つの作業に還元できます。
- 区間の中(−1<x<1 や x<−1, 1<x)では,xn がどうふるまうかで式が自動的に決まる
- 連続か不連続かは,区間の中ではなくつなぎ目(x=±1 など)だけで決まる
問題が「関数を求めよ」でも「連続性を調べよ」でも,やることは結局「区間の中を整理し,境目を点検する」。この見通しさえ持てれば,初見の問題でも手が動きます。
土台:xn の極限は「x が −1 と 1 の間か外か」だけで決まる
なぜ「場合分け」にたどり着くのか
いきなり公式を覚えるのではなく,なぜ場合分けが必要になるのかを,式の形から読み解いていきましょう。ここが分かれば,初見の問題でも自分で方針を立てられます。
この種の関数は f(x)=n→∞lim(⋯) の形をしています。まず気づいてほしいのは,次の 2 つです。
- 動いている(∞ に飛ばしている)のは n の方であって,x ではない。x はいったん「ある一つの数」として固定されている。
- その n は,xn や x2n のように x の右肩(指数)に乗っている。
この 2 つを合わせると,問題の正体が見えてきます。「ある数 x を,n 回・2n 回……と限りなくかけ続けたら,どこへ向かうか」を調べているのです。
では,ある数を限りなくかけ続けたとき,行き先を決めるのは何でしょうか。それはかける数そのものの大きさ——つまり指数の底にあたる x が,1 より大きいか・小さいかです。
- 0.5 のように 1 より小さい数 → かけるほど小さくなり 0 へ
- 2 のように 1 より大きい数 → かけるほど大きくなって発散
- ちょうど 1 や −1 → 特別なふるまい
だから,x の大きさで場合を分ける。これがこの分野のすべての出発点です。「n の極限なのに x で場合分けする」のは,n が x の指数に乗っているから,x の大きさが行き先を支配しているからなのです。
場合分けの結論
以上をまとめると,n→∞ のとき,xn がどこへ向かうかは,x が −1 と 1 の間にあるか,外にあるかだけで決まります。
xn の極限(n→∞)
n→∞limxn=⎩⎨⎧01振動(極限なし)絶対値が限りなく大きくなる(−1<x<1)(x=1)(x=−1)(x<−1, 1<x)
直感で押さえておきましょう。0.5 のように −1 と 1 の間の数を何回もかければ 0 に吸い込まれ,2 のように 1 より大きい数を何回もかければ限りなく大きくなる。1 はいつまでも 1。
ここで x=−1 だけは別あつかいです。x=−1 を何回もかけると −1, 1, −1, 1,… と 1 と −1 を行ったり来たりして,どこか一つの値に近づきません。これを振動といいます。x<−1(たとえば −2)が「絶対値がどんどん大きくなって発散」するのとは別物で,x=−1 は大きくもならず,値も定まらない。だから x=−1 は外側とまとめず,独立した一つの場合として書きます。
この性質を使うと,x2n や x2n+1 を含む分数の極限は,x の範囲ごとにどの項が生き残るかを見るだけで求まります。
KRONE ポイント
xn の極限の問題は,まず数直線に −1 と 1 を打つことから始まります。「−1<x<1(内側)」「x<−1, 1<x(外側)」「x=1」「x=−1」の 4 つに分けて考える,これが全パターンの土台です。
(参考:−1<x<1 をまとめて ∣x∣<1,外側を ∣x∣>1 と書くこともあります。∣x∣ は「0 からの距離」で,「−1 と 1 の間か外か」と同じ意味です。)
型1:x2n を含む分数は区間ごとに別の式になる
分母分子に x2n がある分数は,区間によって「生き残る項」が変わるので,1 つの式が区間ごとに別の顔を見せます。代表的な型を完全に分解してみましょう。
例題1-1
次の関数 f(x) を求めなさい。
f(x)=n→∞limx2n+1x2n+1+ax2+bx+1
答え・解説を見る
x2n のふるまいで場合を分けます。x2n=(x2)n なので,−1<x<1(内側)なら x2n→0,x<−1 または 1<x(外側)なら x2n→∞ です。
(ア) −1<x<1 のとき x2n→0,x2n+1→0 なので,
f(x)=0+10+ax2+bx+1=ax2+bx+1(イ) x=1 のとき x2n=1, x2n+1=1 を代入して,
f(1)=1+11+a+b+1=2a+b+2(ウ) x=−1 のとき x2n=1, x2n+1=−1(指数が奇数)なので,
f(−1)=1+1−1+a+(−b)+1=2a−b(エ) x<−1 または 1<x のとき x2n→∞。分母分子を x2n でわると,
f(x)=n→∞lim1+x2n1x+x2nax2+x2nbx+x2n1=1+0x+0+0+0=xまとめると,
f(x)=⎩⎨⎧x2a−bax2+bx+12a+b+2(x<−1, 1<x)(x=−1)(−1<x<1)(x=1)
KRONE ポイント
x2n を含む分数は「外側(x<−1, 1<x)では分母分子を x2n でわる」が決め手。わると x2n1→0 の項が次々消えて,生き残る項だけが残ります。x=±1 は数を直接代入する(x2n+1 の符号に注意)。
確認演習1
g(x)=n→∞limx2n+1x2n+1+x について,次を求めなさい。
- (1)−1<x<1 のときの g(x)
- (2)g(1) と g(−1)
- (3)x<−1, 1<x のときの g(x)
答え・解説を見る
a=0, b=1, 定数項=0 にあたる形ですが,直接調べます。
(1)−1<x<1:x2n→0, x2n+1→0 より
g(x)=0+10+x=x(2)x=1:g(1)=1+11+1=1。 x=−1:g(−1)=1+1−1+(−1)=−1。
(3)x<−1, 1<x(外側):分母分子を x2n でわると
g(x)=n→∞lim1+x2n1x+x2nx=1+0x+0=x(答)(1)x (2)g(1)=1, g(−1)=−1 (3)x
すべての範囲で g(x)=x になり,しかも x=±1 でもつながっています。つまりこの g(x) は x 全体で g(x)=x となる連続関数です。係数の選び方しだいで,つなぎ目がそろうこともある——これが次のテーマの伏線です。
型2:連続性は「つなぎ目」だけで決まる
場合分けで関数が求まったら,次は連続性です。ここで大事なのは,区間の中はチェックしなくていいということ。ax2+bx+1 も x も多項式で,もともとなめらかにつながっています。あやしいのは区間のつなぎ目(x=±1)だけです。
x=a で連続であることの定義
x→a−0limf(x)=x→a+0limf(x)=f(a)(左極限・右極限・その点の値の 3 つが一致)
なぜ 3 つもそろえる必要があるのか。それは,グラフが x=a で「つながっている」ことを保証するには,3 つのうちどれか一つでも欠けるとダメだからです。下の図で,連続でない 2 つの壊れ方を見てください。
- 左(連続):左から近づいた値・右から近づいた値・実際の点の値,3 つが同じ高さ。だから線は切れ目なくつながります。
- 中央(穴があく):左右から近づくと同じ高さに集まる(左極限=右極限)のに,その点の実際の値 f(a) だけが別の場所にある。1 点だけ穴があいて飛び地になり,つながっていません。⇒「点の値」の一致が必要な理由。
- 右(段差):左から近づいた高さと右から近づいた高さが違う(左極限 = 右極限)。x=a でガクッと段差ができ,つながっていません。⇒「左極限=右極限」が必要な理由。
つまり「点の値」が左右の極限とずれれば穴があき,「左右の極限」どうしがずれれば段差ができる。両方を防いで初めて「つながっている」と言えるので,3 つの一致を定義にしているのです。
KRONE ポイント
連続の定義は丸暗記しなくて大丈夫。「線が切れずにつながる」ために,①左右から近づく高さがそろう(段差を防ぐ)②その点の実際の値もそこにある(穴を防ぐ),この 2 つを式にしただけです。つなぎ目の連続性を調べるときは,左極限・右極限・点の値の 3 つを並べて見比べます。
例題2-1
例題1-1 で求めた f(x) が,すべての実数 x で連続になるような定数 a, b の値を求めなさい。
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区間の中(−1<x<1 と x<−1, 1<x)はそれぞれ多項式なので連続。点検するのは x=1 と x=−1 の 2 か所だけです。
x=1 でのつなぎ目
- 左極限(−1<x<1 側):x→1−0lim(ax2+bx+1)=a+b+1
- 右極限(1<x 側):x→1+0limx=1
- その点の値:f(1)=2a+b+2
連続の条件はこの 3 つが一致すること。まず左極限と右極限から,
a+b+1=1⟹a+b=0このとき左右の極限は 1。点の値も確かめると f(1)=2a+b+2=20+2=1 で一致します。
x=−1 でのつなぎ目
- 左極限(x<−1 側):x→−1−0limx=−1
- 右極限(−1<x<1 側):x→−1+0lim(ax2+bx+1)=a−b+1
- その点の値:f(−1)=2a−b
左極限と右極限から,
a−b+1=−1⟹a−b=−2このとき右極限は −1。点の値も f(−1)=2a−b=2−2=−1 で一致します。
連立して解く
a+ba−b=0=−2辺々たすと 2a=−2 より a=−1,よって b=1。
(答)a=−1, b=1
KRONE ポイント
連続性は「境目に立って,左・右・その点の 3 つがそろうか」を見るだけ。x=±1 それぞれで左極限=右極限の式を立て,最後に点の値も一致するか確認します。
型3:ガウス記号は整数点で値が飛ぶ
ガウス記号 [x](x を超えない最大の整数)が入ると,整数の境目で値が 1 つジャンプします。0<x<1 では [x]=0,1<x<2 では [x]=1。この段差が,連続・不連続を分ける急所になります。
例題3-1
f(x)=[x]x が x=1 で連続かどうか調べなさい。ただし [x] は x を超えない最大の整数(ガウス記号)とする。
答え・解説を見る
x=1 の左右で [x] の値が変わることに注意して,左極限・右極限・点の値を調べます。
左極限(0<x<1 側) この範囲では [x]=0 なので f(x)=0⋅x=0。
x→1−0limf(x)=x→1−0lim0=0右極限(1<x<2 側) この範囲では [x]=1 なので f(x)=1⋅x=x。
x→1+0limf(x)=x→1+0limx=1その点の値 x=1 では [1]=1 なので f(1)=1⋅1=1。
左極限 0 と右極限 1 が一致しません。
x→1−0limf(x)=x→1+0limf(x)(答)x=1 で連続ではない(左極限 0,右極限 1 で一致しないため)
KRONE ポイント
ガウス記号は整数の境目が勝負どころ。x=1 の手前は [x]=0,向こうは [x]=1 と値が飛ぶので,左右の極限がずれます。連続性を聞かれたら,必ず整数点の左右で [x] を別々に書き直すこと。
確認演習3
f(x)=[x]x について,x=2 で連続かどうか調べなさい。
答え・解説を見る
x=2 の左右で [x] を書き直します。
- 左極限(1<x<2 側,[x]=1):x→2−0lim1⋅x=2
- 右極限(2<x<3 側,[x]=2):x→2+0lim2⋅x=4
- 点の値:f(2)=[2]⋅2=2⋅2=4
左極限 2 と右極限 4 が一致しないので,
x→2−0limf(x)=x→2+0limf(x)(答)x=2 で連続ではない(左極限 2,右極限 4)
整数点 x=k ごとに左右で段差が出るので,f(x)=[x]x はすべての整数で不連続になります。
まとめ:複雑な関数も「区間を分けて境目を見る」だけ
- 土台は xn の極限:−1<x<1 で 0,x<−1, 1<x で発散,x=1 は 1,x=−1 は振動
- 型1:x2n+1x2n+1+⋯ は区間ごとに別の式。外側(x<−1, 1<x)では分母分子を x2n でわる
- 型2:連続性は区間の中ではなくつなぎ目(x=±1)だけで決まる。左極限=右極限=点の値
- 型3:ガウス記号 [x] は整数点で値が飛ぶ。左右で [x] を書き直す
見た目がいかつい関数でも,やることは「区間を分けて,境目を点検する」の一点に還元できます。土台さえ持っていれば,初見でも崩れません。
クローネ学園での指導
クローネ学園では,数Ⅲのこの分野を「公式の暗記」ではなく一つの作業への還元として指導しています。xn の極限・ガウス記号・連続性は,別々の難所に見えて,本質は「区間に分けて,つなぎ目だけを丁寧に調べる」という同じ手続きです。
受験生がいちばん落としやすいのは,x=−1 で x2n+1 の符号を見落とす点と,ガウス記号で整数点の左右の [x] を取り違える点です。クローネ学園では,この二つの急所を最初に潰してから演習に入ります。境目だけに集中できるようになると,計算量の多い問題でもミスが激減します。
この単元は,微分係数の定義や中間値の定理を使った「方程式が解を持つことの証明」へとつながっていきます。土台となる連続性の考え方を,型で整理して身につけておきましょう。
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