この記事について
数Ⅲの三角関数の極限は,公式 x→0limxsinx=1 ひとつを軸に,式をどう変形してこの形に持ちこむかで決まります。問題が多く見えても,使う手は数パターンしかありません。この記事では,三角関数の極限を解法の型ごとに整理します。
- 基本公式 xsinx→1 とその仲間(tanx/x など)
- 係数をそろえる型(sinax/sinbx など)
- 置きかえる型(x→∞,x→π/2 などを x→0 に直す)
- 1−cosx を有理化する型
- はさみうちの原理を使う型
各型のあとに確認演習をつけました。型を見抜く練習をしてみてください。
基本公式
三角関数の極限の基本
x→0limxsinx=1
この公式を使うコツは,同じ中身sin(中身) の形を作ることです。中身と分母がそろえば,値は 1 になります。
まず,この公式から直接導ける仲間を確認します。
逆数の形
x→0limsinxx=x→0limxsinx1=11=1
tan の形
tanx=cosxsinx なので,
x→0limxtanx=x→0lim(xsinx×cosx1)=1×11=1
KRONE ポイント
xsinx→1,sinxx→1,xtanx→1 はすべて 1。まず「sinまたはtanと,同じ中身が分母にある」形を探すのが出発点です。
型1:係数をそろえる
sinax のように角度に係数がついたら,分母も同じ ax にそろえて axsinax→1 を作ります。
例題1-1
x→0limsin7xsin3x を求めなさい。
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分子は 3x,分母は 7x でそろえ,つじつまを合わせる係数をかけます。
sin7xsin3x=7xsin7x3xsin3x×7x3xx→0 で 3xsin3x→1,7xsin7x→1 なので,
x→0limsin7xsin3x=11×73=73
例題1-2
x→0limtan2xsin5x を求めなさい。
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tan2x=cos2xsin2x に直すと,
tan2xsin5x=cos2xsin2xsin5x=sin2xsin5x×cos2xそれぞれ中身にそろえて,
=2xsin2x5xsin5x×2x5x×cos2x⟶11×25×1=25
例題1-3
x→0limsin2xtan3x を求めなさい。
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tan3x=cos3xsin3x に直し,中身をそろえます。
sin2xtan3x=2xsin2x3xsin3x×2x3x×cos3x1⟶11×23×1=23
係数をそろえる型の結論
x→0limsinbxsinax=bax→0limtanbxtanax=ba
KRONE ポイント
sinbxsinax の極限は ba,tanbxtanax も ba。係数の比がそのまま答えになるのは,中身をそろえれば 中身sin がすべて 1 になるからです。
確認演習1
次の極限を求めなさい。
- (1)x→0limsin9xsin4x
- (2)x→0limsin5xtan6x
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(1)中身をそろえると係数の比に直る。
x→0limsin9xsin4x=94(2)tan6x=cos6xsin6x とし,cos6x→1。
x→0limsin5xtan6x=56(答)(1)94 (2)56
型2:置きかえる(x→0 に直す)
x→∞ や x→2π のように x→0 でないときは,t を置いて t→0 の形に直します。
例題2-1
x→∞limxsinx1 を求めなさい。
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t=x1 とおくと,x→∞ のとき t→0,また x=t1 です。
x→∞limxsinx1=t→0limt1sint=t→0limtsint=1
例題2-2
x→2πlimcos3xcosx を求めなさい。
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t=2π−x とおくと,x→2π のとき t→0。x=2π−t を代入すると,
cosx=cos(2π−t)=sintcos3x=cos(23π−3t)=−sin3tしたがって,
x→2πlimcos3xcosx=t→0lim−sin3tsint=t→0lim−3tsin3ttsint×3tt=−11×31=−31
例題2-3
x→4πlimx−4πsinx−cosx を求めなさい。
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t=x−4π とおくと,x→4π のとき t→0,x=4π+t。加法定理より,
sinx=sin(4π+t)=22(cost+sint)cosx=cos(4π+t)=22(cost−sint)差をとると sinx−cosx=2sint なので,
x→4πlimx−4πsinx−cosx=t→0limt2sint=2
置きかえの指針
x→∞ ⇒ t=x1/x→a ⇒ t=x−a (いずれも t→0)
KRONE ポイント
置きかえの目印は「x→0 でない」こと。x→∞ なら t=x1,x→a なら t=x−a。t→0 に直してから基本公式に持ちこみます。
確認演習2
x→2πlimx−2πcosx を求めなさい。
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t=x−2π とおくと t→0,x=2π+t。
cosx=cos(2π+t)=−sintよって,
x→2πlimx−2πcosx=t→0limt−sint=−1
型3:1−cosx は有理化する
1−cosx が出たら,(1+cosx) を分母分子にかけて有理化します。分子が 1−cos2x=sin2x になり,基本公式に持ちこめます。
例題3-1
x→0limx21−cosx を求めなさい。
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(1+cosx) を分母分子にかけます。
x21−cosx=x2(1+cosx)(1−cosx)(1+cosx)=x2(1+cosx)sin2xx2sin2x=(xsinx)2→1,1+cosx→2 なので,
x→0limx21−cosx=1×21=21
覚えておきたい結果
x→0limx21−cosx=21
KRONE ポイント
1−cosx を見たら有理化。(1+cosx) をかけて sin2x を作るのが定石です。結果の 21 は頻出なので覚えておくと速いです。
確認演習3
x→0limx21−cos2x を求めなさい。
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中身が 2x なので,(1+cos2x) をかけて有理化します。
x21−cos2x=x2(1+cos2x)sin22x=(2xsin2x)2×x2(2x)2×1+cos2x1(2xsin2x)2→1,x2(2x)2=4,1+cos2x→2 なので,
x→0limx21−cos2x=1×4×21=2
型4:根号は有理化して sin の形を作る
sin の中身に根号があるときも,根号の有理化で 中身sin(中身) の形を作ります。
例題4-1
x→0lim3xsin(x+1−1) を求めなさい。
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中身 x+1−1 を分母にもそろえるため,2 つに分けます。
3xsin(x+1−1)=x+1−1sin(x+1−1)×3xx+1−1左側は x→0 で中身が 0 に近づくので →1。右側は根号を有理化します。
3xx+1−1=3x(x+1+1)(x+1−1)(x+1+1)=3x(x+1+1)x=3(x+1+1)1x→0 で x+1+1→2 なので,右側は 3×21=61。
x→0lim3xsin(x+1−1)=1×61=61
KRONE ポイント
sin(中身) は,まず「中身sin(中身)→1」を切り出してから,残りを処理します。根号が残れば有理化,という二段構えで考えます。
型5:はさみうちの原理
sinx1 や cosx1 のように,振動して極限を持たない部分があるときは,基本公式では解けません。−1≦sinθ≦1,−1≦cosθ≦1 で上下からはさんで追い込みます。
例題5-1
x→0limxcosx1 を求めなさい。
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x=0 を除くすべての実数で −1≦cosx1≦1 です。
(ア) x>0 のとき 各辺に x をかけて,
−x≦xcosx1≦xx→+0 で左右とも 0 に近づくので,はさみうちの原理より xcosx1→0。
(イ) x<0 のとき 各辺に x(負)をかけると不等号の向きが変わり,
x≦xcosx1≦−xx→−0 で左右とも 0 に近づくので,同様に →0。
(ア)(イ) より,
x→0limxcosx1=0
例題5-2
x→∞limx[x] を求めなさい。ただし [x] は x を超えない最大の整数(ガウス記号)とする。
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ガウス記号の定義より,すべての実数で次の不等式が成り立ちます。
[x]≦x<[x]+1これを変形して [x] をはさむ形にします。各辺から x を考え直すと,
x−1<[x]≦xx>0 で各辺を x でわると,
1−x1<x[x]≦1x→∞ で左辺は →1,右辺は 1。はさみうちの原理より,
x→∞limx[x]=1
はさみうちの原理
g(x)≦f(x)≦h(x) で limg(x)=limh(x)=L ならば limf(x)=L
KRONE ポイント
sinx1・cosx1・ガウス記号 [x] のように「値が確定しないが範囲は分かる」ものは,はさみうちの合図。−1≦cosθ≦1 などで上下からはさみます。x が負のときは不等号の向きに注意。
確認演習5
x→0limx2sinx1 を求めなさい。
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−1≦sinx1≦1 の各辺に x2(≧0)をかけると,
−x2≦x2sinx1≦x2x→0 で左右とも 0 に近づくので,はさみうちの原理より,
x→0limx2sinx1=0x2 は常に 0 以上なので,x の正負で場合分けが要らないのが xcosx1 との違いです。
まとめ:型の見分け方
- 基本は x→0limxsinx=1。「sin(中身)/同じ中身」を作る
- 型1:sinax/sinbx などは中身をそろえる → 係数の比
- 型2:x→∞・x→π/2 などは t で置きかえて x→0 に
- 型3:1−cosx は (1+cosx) をかけて有理化 → x21−cosx→21
- 型4:根号入りも有理化で 中身sin(中身) を作る
- 型5:sinx1・ガウス記号は,はさみうちの原理
問題を見たら,まず「どの型か」を判断する。型さえ見抜ければ,あとは決まった手順を進めるだけです。
クローネ学園での指導
クローネ学園では,数Ⅲの極限を「公式の暗記」ではなく型の見分けとして指導しています。三角関数の極限は問題数こそ多いものの,使う手は今回の 5 つの型にほぼ収まります。「これは中身をそろえる型」「これは置きかえる型」と判断できるようになれば,初見の問題でも手が動きます。
大学受験では,この単元は微分の定義(x−asinx−sina 型)や,極限を使った関数の連続・微分可能性の議論にもつながります。土台となる三角関数の極限を,型で整理して身につけておきましょう。
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